ヒビキのマホウ〔1〕

 依澄れい麻枝准ヒビキのマホウ』〔1〕(ISBN:4047137138)。
 発売直後に買って一度読み,保留しておいたもの。再読してみたのだが,やはり何とも評価しづらい。
 ストーリーは,これといった才能に恵まれていないヒビキが,マホウツカイの権威であるシロツキ先生の助手として暮らすところから始まる。
 ドジっ娘が成長していく様を描くビルドゥングスロマン教養小説)――のように見えるけれど,ヒビキ(=主人公)の成功は,陰で支えるシロツキ(=全能の人)の助力によって達成されている。すなわち,主人公自身が能力を獲得し成長するのではなく,主人公が庇護者を獲得することにより成功がもたらされる。実際に物語を駆動させているのは「家族の回復」という命題。ヒビキは「シロツキの助手=家族」であるというだけで,遙かに優位な立場に置かれている。
 これを「やさしさに満ちた世界における心温まるファンタジックストーリー」と受け止められるのは,きっと純真な人なのだろう。こんなお話があっても悪くはない。でも,私には向かないようだ。