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 「コロンビア事故最終報告書 非公式日本語版」を読む。今年2月に起きた事故の調査委員会が出した文書なのですが、極めて興味深い。訳者の柏井勇魚氏が、翻訳に取りかかろうとした動機を語った文中、次のような一節があります。

 「彼らは、『シャトルはそのプランの段階から既に間違った道を歩み始めていた』と指摘したんです。この事故は、その間違いに端を発すると。報告書にはこうあります 『調査はテキサス東部から始まったが、結局、30年前の過去にたどり着いた』」。

 そうして明らかにすることは、宇宙開発事業をめぐる政治的な駆け引きの中でスペースシャトル計画が登場したことと、計画のほころびを表面化させないように腐心していたが為にNASAが抱えるに到った風土。それこそが事故の原因であるとし、耐熱タイルの脱落という技術的な問題に帰着せしめていないところに特徴があります。委員会の思い切った指摘もさることながら、訳者の技量にも敬意を表しておきたい。訳出作業は未だ道半ばといったところでしたが、将来への提言を述べた終章まで出そろうのをお待ちしましょう。

 それに比べ、JAL123便の事故はどうでしょう。先日、気になって記録を読み返しました。垂直尾翼が損傷したということだけは確かなようですが、何故そのようなことが起こったのかについて、調査委員会は納得のいく説明をしていませんでした。圧力隔壁の損傷が引き金であるとする説には、異論が強いようですし。18年という歳月は、関心を失わせるには十分な時間です。しかしコロンビア号の報告書は、30年前は現在と隔絶した過去ではないということを、まざまざと示すものです。