Wnn

 私が手がけているものに「強化辞書」三部作があります。

  1. 岡野史佳用語の強化辞書』*1
  2. わかつきめぐみ用語の強化辞書』*2
  3. 天原ふおん用語の強化辞書』*3

今回は、その第2作目について。昨夏、製作発表をとあるMLで行ったのですが、最近1通の返信がありました。私の「協力者が得られていないので、当分は(更新を行わず)このまま放置します」という発言に対して、

「他人をあてにできるものではないよ。自分1人でやりなさい」

という一文が書かれていました。あまりに短い文章で意味を計りかねたのですが、発言されたのが旧Wnnの開発に携わっておられた方だったのですよ。Wnnと言えば、UNIXの世界には立ち入ったことのない私ですら名前を聞いたことのある、高名な日本語処理プログラムです。
 説明のために私がFM-NEW7を使っていた1985年頃の昔話をしておきましょう。日本語を使おうとする時には、まず漢字コード表の本を開いて目的の文字を探し、16進数で打ち込んでいくということをやっていました。スペースキーを押して変換するという現在の手法は、未だ一般化していなかったのです。コンピューターでも楽に日本語が扱えるようになりたい――という欲求を実現したものが、1987年に世に出たWnnだったわけです。
http://www.tomo.gr.jp/wnn/wnn-yogo.html
http://www.ipsj.or.jp/katsudou/museum/computer/4050.html
 そういった予備知識を踏まえたうえで先の発言を再読すると、「さぞかし大変であったのだろうなぁ」と先人の苦労が忍ばれます。「岡野史佳用語〜」は誕生4周年になりますが、誰にも手伝ってもらったことはありません。DOSへの移植や、Macでの動作確認などで協力を受けたことはありますけれど、辞書本体の練り上げは1人で行っています。つい先日、「日比野里紗」が「×里沙」に、『瞳のなかの王国』が「×瞳の中」になっていたという重大なバグを見つけたのですが、それまで誰からも指摘が無かったということに淋しい思いをしました。推測でしかありませんが、Wnnの開発に際しての憂いはその比ではなかったのではないかと。ささやかながら、ここに書き記すことで功績を記録にとどめておきます。
 岡野史佳先生については、新作情報を伝える無料メールマガジンも発行しています。こちらについては多数の協力者を得ていることもあり、我ながら良い出来だと自負しています。しかし、この1年というもの読者数が伸びていないん。実状を明らかにしてしまうと、登録件数204(汗) 作者の知名度に比べると、控えめにみても桁1つ足りない。岡野史佳先生のファンだと名乗る人が、掲示板に「新刊が出ているの知らなかった」と書いているのを見かけると、悲しくなります。情報があふれている中で、どうやって存在を示すかというのは、なかなか難しい。せめて、この文の中では宣伝しておこうっと。どうぞごひいきに。
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