ちぃちゃんといっしょの風景

 『ひまわり幼稚園物語あいこでしょ!』の大井昌和(おおい・まさかず)が放つ新シリーズ3作を読み比べ。

▼ 『ちぃちゃんのおしながき

ISBN:4812460077
 お酒が大好き、料理は出来ない、それでも小料理屋「みづは」の女将なママ・有坂三葉(29歳)。母親のダメっぷりに奮起して調理場に立つ板前娘・ちぃちゃん(千夏、10歳)。母子による繁盛記。
 悪くないです。ただ、キレというか、冴えがない。4コマ漫画という表現技法と、大井昌和のスタイルとが咬み合っていないように感じる。
 比較対象として、後藤羽矢子を挙げます。「ストーリー4コマの女王」という異名を取る後藤は、『どきどき姉弟ライフ』『パブロフの犬』など絶妙な味わいを感じさせる作品を世に出しています。しかしながら非4コマになると、ぼやけた作風になってしまう。思うに後藤羽矢子は、単調なコマ構造に親和性が高いのでしょう*1
 これと逆のことが、大井に当てはまる。巻末に収められた特別編「ちぃちゃんの秘密の魔法」では自由なコマ割りをしているのだが、これが実にのびのびとしていて気持ちが良い。ほのぼのとした作品で、ポテンシャルは十分にある。

▼ 『いつもいっしょに』

いつもいっしょに 1 (バンブー・コミックス)
 凸凹姉妹物語。表紙左側のちんまい方が姉で高校教師な里宮茜。お間違えなきよう。そして、右側の長身美人が妹の葵(高校1年生)。こちらも4コマ漫画。
 こちらは、キャラクター設定に難がある。妹をいぢわる天然小悪魔に仕立てようとしているのだけれど…… 大井昌和は人柄が良すぎて、「悪人」が描けないのではないだろうか(苦笑) 頭身が低くて目はくりくりっとした少し勝ち気な女の子なら得意みたいだけれど。

▼ 『風華のいる風景

風華のいる風景 1 (まんがタイムきららコミックス)
 オムニバス形式。こちらは非4コマ。個々の短編は独立した話なのだけれど、前の話に出てきた登場人物が次の物語に影響を与えることで、少しずつ関連性を有して繋がっていく。
 相対的に、というわけではなく、良くできた作品だと思います。
 本作が秀逸なのは、ストーリー・テラーたる女子中学生・風華(ふうか)の登場のさせ方。風華は、物語にさしたる影響を与えません。例えばバス停に佇んでいるだけ。あるいは、店内に居合わせるだけ。とはいえ、我々《読み手》と同じ単なる傍観者ではない。風華がそこに《居る》ことにより舞台は統一され、視点が与えられる。そうした趣向が題名に表象されています。
 展開は、ベタな人情芝居。世界は情愛に満ちあふれている。第1話にて「まいは うまれられて しあわせです」にホロリとなってしまいました*2

みんな、どこかで
つながっている。
初版の帯より

*1:コマ割りが上手くない、とも言える。

*2:うあぁ、またもや4歳児に萌えてしまった……