大学院はてな :: 違法争議行為と懲戒処分

 研究会にて、東京郵政局(全逓怠業・懲戒免職)事件の検討。公共企業体等労働関係法により争議行為が禁止されていた郵便集配人らが、昭和53年から翌54年にかけての年末年始に闘争を実施。これにより郵便物の滞留が発生した。郵政省は闘争参加者に対して懲戒処分(戒告1,425名、減給1,457名、停職286名、懲戒免職58名)を発令。本件は、このうちの懲戒免職となった7名が、免職処分の取消・無効確認を求めたもの。
 第一審*1 は、請求を棄却。これに対し、控訴審*2 は請求を認容するという、反対の判断が示された。
 考えるべきは争議行為における個人と集団の関係。本件では、闘争が大規模に展開されたことで業務に支障が生じたが、争議行為は怠業(スロー・ダウン=作業能率の低下)という形態であった。ここで判断が分かれた。

第一審
 「組合役職者(原告らのいう単純参加者)のした争議行為であっても、その程度、態様によっては、反社会性、反規範性が強いものも十分あり得るというべきであり、反社会性、反規範性が強い場合には、他の事情をも考慮して その者を懲戒処分にすることも、それが裁量権の逸脱ないし濫用にわたらない限り、懲戒権者の裁量権の範囲内のものというべきである。」
控訴審
 「このような態様及び性質の争議行為を、執拗に、かつ長期間実施したとしても、違法な争議行為への参加という職場秩序違反の行為に対する非難として懲戒処分を免れないものの、個々の組合員の行為として見る限り、もたらされる職場秩序の阻害の程度は、たかが知れており、これに対する非難としての懲戒の内容及び程度にも、おのずから限度があり、これを理由として懲戒処分を課す判断は、その合理性に重大な疑いがある。」

 控訴審判決が妥当だろう。違法な争議行為であれば懲戒を課すのは差し支えないが、本件事案のもとにあっては懲戒解雇ではなく、軽い処分に留めるのが適切であった事案だと思われる。

*1:東京地裁判決 平成6年12月14日 公務員関係判決速報317号2頁

*2:東京高裁判決 平成16年6月30日 判例時報1878号146頁