ガンスリンガー・ガール〔5〕

 相田裕GUNSLINGER GIRL”第5巻(ISBN:4840230722)読了。
 言いたいことはあるのに、言葉にならない。
 先日、第4巻までの状況をもとに「ポスト・セカイ系」としての評論を試みたところであるが、今のところこの枠組み認識を変更する必要は感じていない。むしろ、第5巻を経て【関係性】は複雑さを増している。第24ないし25話における五共和国派サイドの視点が加わることにより【中状況】が複眼化され、パラレルな構造になっている。正義が相対化された物語空間では、従前のセカイ系の枠組みは成立しえない。むしろ、ポストモダンで失われたはずの「大きな物語」が浮上してきている。
http://d.hatena.ne.jp/genesis/20050426/p1
 もはや此処に至っては、本作の評価は「誰の死をもってあがなうのか」によって決するほかない。もし、登場キャラクターすべてが戦いをやめたならば……。そのような仮定は、甘ったるい妄想の域を出ない。
 読者にとっての正義を実現するためならば、次のような解決が大団円かもしれない。五共和国派を追われたフランカらとヘンリエッタ達が手を携え、悪しき政治家に立ち向かいマキャベリストを駆逐する……。だが、それもまた虚しい。いかに読者が革命分子に正義を見出したとしても、国家=一般市民から見れば、彼女らは社会に害を為すテロリストなのだ。“GUNSLINGER GIRL”がプロレタリア文学として結末に至ったならば、それはきっと滑稽なものに違いない。
 本作のドラマツルギーは、キャラクターの死を要求する。哀しむなかれ、最も愛すべき者が捧げものになろうとも。知れ、これはガンスリンガー達の受難劇*1であることを。
http://d.hatena.ne.jp/genesis/20050324/p1
バッハ:マタイ受難曲 抜粋

Wir setzen uns mit Tränen nieder(私たちは涙を流し、ひざまずき)
Und rufen dir im Grabe zu:(あなたの墓に呼びかける)
Ruhe sanfte ruh'!(眠りたまえ安らかに、安らかに眠りたまえ!)
Ruht, ihr ausgesognen Glieder!(眠りたまえ、神に選ばれし御身体よ!)
J.S.バッハ『BWV244 マタイ受難曲』第78曲より*2


▼ おとなりコメント

*1:〔伊〕La Passione 〔英〕Passion play

*2:岡本和子訳