森博嗣 Φ+θ

 森博嗣(もり・ひろし)の新シリーズ『Φは壊れたね』(ISBN:4061823922)と『θは遊んでくれたよ』(ISBN:4061824317)を読む。
Φは壊れたね (講談社ノベルス) Θ(シータ)は遊んでくれたよ (講談社ノベルス)
 新ヒロインは、『幻惑の死と使途』でゲストをつとめた加部谷恵美(かべや・めぐみ)。初登場時には「大人びた印象を受ける利発な中学生」だったのが、「精神的な成長の度合いが通常よりもゆったりしていて、家事技能には発展の余地が多分に残されている」大学2年生に。なんか、女性に恨みでもあるのでしょうか、この作者は(笑)
 探偵役に起用されたのは、加部谷と同学年の海月及介(くらげ・きゅうすけ)。犀川創平と類似した思考ロジックの持ち主として描かれる。講座の先輩として西之園萌絵を登場させることで旧シリーズとの関連性を保ちつつ、適度な距離感を持たせている。犀川助教授が登場するだけでミステリィが解決する状況になっていましたからね(まるで取調室におけるカツドンのようだ)。
 『Φ』『θ』のいずれとも奇抜さで楽しませてくれる。けれど、読んでいる最中は、何が謎なのかがわからなくて腹立たしくなってくる。実際の事件処理の状況に近い問題状況とも言えるのだけれど……
 さて、この“Gシリーズ”10作(?)を通しての大きな謎は、どこに仕掛けられていくのか。あからさまに怪しいのは海月及介の過去ですが(Φの23頁)、これがどう利用されていくのでしょうか。