もとちゃんの夢日記

 新井素子(あらい・もとこ)『もとちゃんの夢日記』(ISBN:4041600081)読了。
 1995に刊行されたエッセイ集。パソコン通信時代、高千穂遙氏が運営するボード「茶房てくにか」に著者が書き込んだログを内容別に整理したもの。
 第一章『夢日記』は、夢で見たけれど小説のネタにはならないものの披露が続く。夢が物語になるように習練を積んだ、というだけあって、荒唐無稽ながら整合性のある「お話」になっている。その訓練の内容についても紹介されているのだが……夢の辻褄が合わなかったら、もういちど夢を見直すって(汗)
 第二章『旅日記』。え〜、どうやったら、こんな予定外のことが続々起こる旅が出来るのか、私にはわかりかねます……。
 今から考えれば、1970年代の終わりにアライモトコが出現したことの衝撃は、同時代的にはものすごく大きなことだったのだなぁ。作品ではなく、作者が興味対象となる作者萌え。あるいは、作者が「作者」というキャラクターになることへの自覚的な態度。時代の先を行っていた存在であることに改めて気づかされる。
 私は、最初に買ったエッセイが『ひでおと素子の愛の交換日記』だったという読書遍歴を持っているので、アライモトコが基準だったのです。それが特異な存在であることに気づいたのは、だいぶ後になってからでした。