ライスの国のガンスリ

 米国出張してきたたてにょんから,おみやげに『GUNSLINGER GIRL』の英語版をもらいました(id:lapis:20060213)。しかも嬉しいことに,送られてきたのは第2巻(ISBN:1413902332)。Grazie! 
Gunslinger Girl Vol.2 (Gunslinger Girl)
 あれ?と思ったのは裏表紙の説明書き。

Graphic Novel/Manga
Sci-Fi
RATED 16+

 Sci-Fiは,サイエンスフィクションのことですね。そっか,世界基準に当てはめると『ガンスリ』って SF なんだ。
 グラフィック・ノベルについては Wikipedia に解説があって,「通常は長く複雑なストーリーを備えた、しばしば大人の読者が対象とされる、厚い形式のアメリカン・コミックを指す用語」と定義されていました。

 日本語版と英語版を隅々まで見比べてみましたが,翻訳は順当なもので,驚くような箇所は見当たりませんでした。GIUSEPPEという単語があって何だろうと首を傾げ,人名の「ジョゼ(ッフォ)」だと気づくまで数秒かかるようなことはありましたが……。
 ベートーヴェン交響曲第9番は,ドイツ語ではなく英語の歌詞。〈描き文字〉は日本語のままで,横に英語が書き足してあるタイプ。第7話は副題が微妙に変更されており,

和) Ice cream in the Spanish open space
英) Ice Cream in the Piazza di Spagna

となっています。“Piazza di Spagna”はイタリア語で「スペイン広場」ですね。
 あらすじ紹介が,気になると言えば気になる。

The Social Welfare Agency lies hidden in Italy's ancient ruins, where an elite group of yong children trains to kill on command. Claes and Angelica are two such operatives for the Agency. Claes's unflagging façade, reminding him of the man he once was, even while Angelica's indoctrination into the Agency will cause her own humanity to slip away...

この下線を引いた部分なのだけれど,どうして「古代遺跡」が出てくるんだろう?
 さて,気になる専門用語ですが,次のようになっていました。

和) 「条件付けって恐いね」
英) “This conditioning is frightening...”
159頁

和) 「義体にしておくのがもったいない」
英) “It's too bad they have to be CYBORGS, huh?”
77頁

うわ,サイボーグですって。日本語では久しくお目に掛かっていないなぁ。なお〈義体〉については,学術的な表現も併用されている。

和) 「義体って本当にすごいんだね」」
英) “Those prosthetics are something else.”
157頁

和) 「あの子らの担当官になっても同じ事が言えるのか?」
英) “How would you feel if you were a HANDLER?”
132頁

辞書を引くと handler は「調教師」「飼育係」でした。ぁぅ(^^;
 なるほど,と思った言い回しには,こんなものがありました。

和) 「なんだあの先生…… 千里眼か?」
英) “What, the doctor's PSYCHIC now?”
119頁

和) プリシッラ 「力は可能性なの 良いことにも悪いことにも使える可能性……」
英) Priscilla “Power gives you OPTIONS. Options that can be used for good or bad...”
159頁

【補論】
 現在のところ『ガンスリンガー・ガール』は第6巻まで刊行されていますが,最も interesting なのは第2巻だと思うんです。
 私が美少女ゲームを論じると〈ギャルゲー評論〉であっても〈エロゲー評論〉にはならないのですが,その理由は,葉鍵系にありがちな「えっちなのはいらないと思います!」的思考のせい。ポルノグラフィとしては男女が肉体的に接触を始めてからが山場なのに対し,恋愛シミュレーションとしては和合に至るまでの関係性構築過程の方が重要。
 他のコンテンツを眺める時も,同じような視点で考えてしまうん。表現論の視点からすれば戦闘シーンのコマ構造も考察対象になるのでしょうが,ことシナリオ展開に関する限りガン・アクションなどは面白い対象ではない。そんなわけで,登場人物の関係性の描写に力を注いでいる序盤の方に GSG の意義を見ています。しかも,メインヒロインで(ヘンリエッタ,リコ,トリエラ)が主軸になる第1巻(ISBN:4840222371)よりも,物語世界の環境を構成するサブヒロイン(クラエス,アンジェリカ)を扱う第2巻(ISBN:4840224218)の方に見どころがある(思考がまとまっていない状態で書き散らしたものだが id:genesis:20050426:p1 は上述のような関心を背景にしている)。
追記
 脱稿後,「なぜ泣きゲーヲタは性描写を嫌うのか」に接した。一見したところでは本稿とは無関係なように思われるだろうが,私の意識の中では結びついた話題であり,下記コメントにも関わるので参照先に掲げておくことにする。