岡田温司 『マグダラのマリア』

 岡田温司(おかだ・あつし)『マグダラのマリア――エロスとアガペーの聖女』(ISBN:4121017811)を読む。
 娼婦の身であった者が改悛したことにより聖女に列せられたという伝説を持つ人物像の成立に興味があったのだが,これについて述べているのは第1章〈揺らぐアイデンティティ〉のみ。かかる存在について聖書にあたり,外伝も紐解いて,混同が起こっていたとかが述べられている。だが,何となく出来上がっていたものを,教皇グレゴリウスの手による「解釈=加工」を通じてイコンになったのだという簡単な説明で終わっていて,何とも釈然としない。不明瞭な存在故に想像をかきたてられるのだというのは分かったが……。
 続く第2章からは,数多くの図版を引用して〈マグダラのマリア〉の描かれ方が説かれているが,これはモノクロで観るものではないねぇ。実物を観に,旅へ出たくなる。