海堂尊 『螺鈿迷宮』

 海堂尊(かいどう・たける)『チーム・バチスタの栄光』が面白かったので,もう1冊読んでみようという気になりました。原則として文庫落ちを待つことにしているので,ハードカバーを買うのは久しぶり。
 店頭には水色の赤色の黒いのと取りそろえてあったのですが,帯に

最強の部下“氷姫”ついに登場

と謳われていた『螺鈿(らでん)迷宮』(ISBN:4048737392)を買うことにしました。
 早速読んでみたのですが,既視感が溢れて止まらない。

  • 戦時中に建てられた病院 → 横溝ちっく
  • 遠く人里離れた奇怪な建物 → 館もの
  • 登場人物の謎めいた言動 → 綾辻ちっく

とか。予想を裏切らない展開が続々と起こる。先読みが出来てしまうことを利用したトリックか?と思ったら,最後には館ものの《お約束》までキッチリ決めてくれたりして。
 それでは語りの面白さはというと,ちょっと好意的には受け止めがたい。今回,「ロジカル・モンスター」こと白鳥は基本的に枠外の存在。病院内の人物はキャラにしても凡庸。満を持して登場したはずの“氷姫”にしても,主人公と積極的に関わることができない立ち位置にいたせいもあって魅力に欠けるように感じました。