湖西晶 『ソーダ屋のソーダさん。』

 湖西晶(こにし・あき)の新刊『ソーダ屋のソーダさん。』(ISBN:4758080003)を読みました。

「私…… 死んでしもうたみたいなんよ……」

というプロローグから始まる。息もしていない,体温も冷たい,心臓も動いていない。なのに,しゃべって動くのは島唯一の店である早田商店(愛称ソーダ屋)の早田沙和(そうだ・さわ)。そんな彼女にドキドキする青年漁師,斎田光哉(さいだ・みつや)。ちなみに恋のさや当てに途中から加わるの看護師の名は,木林(きりん)れもん
 先月に出た『エデデン!』(ISBN:4832276689)は,率直に言って出来が悪かったので心配だったのです。打ち切りになったというのは差し引くにしても,非4コマであるが故に間延びしてしまった感じが強かったです。
 それに対して本作は良い出来でした。コミカルな4コマだと湖西の才能が光ります。あと,これは『お湯屋へようこそ』でも発揮されていましたところであるのですが,ホロリとするフレーバーの加減が上手い。手垢の付いた〈奇跡〉と〈御都合主義〉であっても,使ってみせてもらいたい時があります。上述のような奇怪な設定から始まる『ソーダさん』ですが,最後は綺麗に締めくくってみせてくれました。