上月雨音 『SHI-NO アリスの子守唄』

 上月雨音(こうづき・あまね)『SHI-NO ―シノ― アリスの子守唄』(ISBN:4829163534)を読みました。
 シリーズの第2巻。主要登場人物は志乃ちゃん(小学5年生)と僕(オンボロアパート暮らしの大学1年生),それにキララ先輩(バイタリティが溢れてエロおやじ)の3人。この巻は志乃ちゃんの学校が舞台ということで,彼女の担任である高屋敷なる人物が登場する。
 良かったのは,高屋敷と〈僕〉が志乃ちゃんについて対話する場面でした。高屋敷は,この物語世界の中において,通常世界に通じる常識の代弁者として登場します。

「私は,時々,あの子の事が怖くなる」

と吐露する高屋敷は,志乃について抱いている心情を〈僕〉に向かって明かします。ダークでミステリアスという属性ラベルの示すところが何に起因するものであるかを浮き彫りにしようと試みる,長いダイアログ。通常一般人として到達しうる最高限度の認識で《志乃》という存在を如何に捉えられ得るのかが語りかけられます。
 これに続く第3巻『天使と悪魔』,さらに第4巻『愛の証明』も読了しています。こちらでは涼風真白という魅惑的な新キャラが登場して,やはり《志乃》についてが話題になるのですが,セリフに納得はできなかったなぁ。そのせいか,前後編と位置づけられる両巻は評価が少し低め。
 特筆すべきは東条さかなの挿画。ちょっとくだけた場面で描かれる,くりくりっとした瞳が大変によろしい。