アンカー展

 翌日のお仕事に備えて,前日の内に東京へ。
 夕方に少しばかり時間があるので絵を観に行こうと思ったのですが,「××美術館」と名の付くところの案内を見ても西洋絵画のめぼしいものがない。国立西洋も長期休館中だし。
 それで検索範囲を少しばかり広げてみたところ『故郷スイスの村のぬくもり アルベール・アンカー : 日本初の回顧展』というのを見つけました。場所は Bunkamura の地下1階「ザ・ミュージアム」。東急の本店を初めて訪れたのですがハイソでございました。
 ほとんど予備知識なしに会場へ行ってみたのですが,実に有意義でした。
 アルベール・アンカー(Albert Anker, 1831-1910)はインス村の出。パリでも活動はしたが,故郷スイスの情景を題に採り続けたのだとか。系譜としては自然主義に属するがバルビゾン派とも親交があり,写真の技術が発達を遂げたのと同時期に活動を展開している。
 孫をあやす老人や食事風景など,貧しくはあっても勤勉な農民の暮らしぶりが映しだされている。また,教育にも熱心だったようで,学校と子供達も一つのテーマを形作っていた。鮮やかで写実的。特に肌と髪の表現は素晴らしいまでに緻密。
 お気に入りは《髪を編む少女》でした。娘が三つ編みを結っている姿を描いたものですが,暗い背景であるために明るい金色の髪が映える。引き締まった横顔がステキ。

 記念に絵葉書を何枚か買い求めてきたのだが,単独で観ると冴えない。今回の出品作のうち何枚かには,4年ほど前にヌーシャテル(Neuchatel)の美術館で会っているはずなのだが,どうにも記憶にない。あの時は,オートマタが目当てだったしなぁ……

 今回,アンカーの手になる作品が約100枚も一堂に会していたことで,その全体によってメッセージが形作られていたのだろう。