杉基イクラ 『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』

 杉基イクラ(すぎもと・いくら)『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない――A Lollypop or A Bullet』を読みました。

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫) 砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない 上 (単行本コミックス) 砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない 下 (2)
 桜庭一樹出世作である同名作品を漫画化したものですからストーリーについては割愛しますが,実に良く出来ている。
 例えば《山と海に挟まれた山陰の田舎町》という設定。原作の場合,それが冒頭で強く打ち出されるわけですが,ストーリーが進行すると主人公たる少女たちが浮き立ってくるために,ともすれば意識から逸れていってしまいます。対してマンガの場合には背景というシステムがあるおかげで,彼女たちを囲む空間が提示される。本作では,原作において伝えようとしたものが漫画家によって解釈されるという作業が適切になされており,文章が持っていた魅力を損なわぬよう配慮しつつ映像としての表現が達成されている。

 文章には文章の,絵には絵の魅力がありますが,両者が良好な協力関係に立つことで成り立った例といえるでしょう。