二階堂黎人 『カーの復讐』

 ここしばらく日程が合わずにご無沙汰していたミステリー読書会ですが,評論家のO森さんが進行役を務められるというので,都合を付けて参加してきました。お題は,二階堂黎人(にかいどう・れいと)『カーの復讐』(ISBN:406270577X)。講談社ミステリーランドから2005年に刊行されたもので,モーリス・ルブランのルパン・シリーズ“La Vengance de Ka”を子ども向けに二階堂が翻訳した――ということになっている贋作(パスティーシュ)。
 論説の主題は,二階堂とルブランの親近性ならびに異同について。細かいところは伏せますが,簡単に言えば,《真相が解明された後のリアクション》に着目すると,それが豪華で派手であることが起因して冒険活劇的な性格が強く窺わせていることの指摘。
 参加者の意見を聞いててみると,同時代において二階堂とは対極に位置するのが森博嗣の素っ気なさかもね――という声も出てきました。私自身が二階堂の文章が冗長に感じられるので苦手としていることもあって納得。
 そういえば,元ネタのルパン・シリーズなんて四半世紀読んでいないよなぁ,と思って堀口大學訳の『813』を予習で読んでいったのですが…… ルパンI世って,こんなに嫌みな奴だったのかと新鮮でした。あと,ゲストキャラが「皇帝」って壮大すぎるよ。翻って,二階堂のパスティーシュは,かなり上出来だと思った次第。