斎藤環 『文学の断層』
気がついたら,4月に入ってからまったくといってよいほど本を読んでいない。融通の利く時間の殆どを,新しく受け持ったスペイン語の講義の準備に費やしているもので(90分の授業のために丸々2日は文法書を読んだり教材作りをしたりに宛てている今日この頃)。晩酌をして微酔い気分のときにはアニメ『咲-saki-』を繰り返し観ているしなぁ……。
読書会があるので斎藤環(さいとう・たまき)『文学の断層 セカイ・深層・キャラクター』(ISBN:4022504080)を読んだのですが,《読み物》を手にしたのは本当に久しぶり。
本書の刊行は昨夏ですが,もともとは『小説トリッパー』に2004年から2006年にかけて連載されたもの。
参加者の大部分は文学研究科の大学院関係者でしたので,それぞれの興味関心に引きつけて議論が提起されたのですが,だんだんと霧消していってしまう。例えば《ゲーム的リアリズム》では東浩紀を援用し,セカイ系でぷるにえ発言を引用し,成長と変化について伊藤剛の「キャラ/キャラクター」論を引き合いに出し,震災文学に関して大塚英志を参照するのですが,読み込んでみると元となった論者のキーワードの用い方と斎藤の適用とにズレがあることに気づく。あまり厳密に定義しないで用語が使われているため,自分で論考を書くとなるときには迂闊に参照できません。斎藤環のセンスは素晴らしいけれど……という感じで。