野村美月 『“文学少女”見習いの、初戀。』

 学会参加のため神戸へ出張。仕事を終えたあとに新千歳空港から移動。
 機内では野村美月(のむら・みづき)『“文学少女”見習いの、初戀(はつこい)。』(ISBN:4757748299)を読む。本編は既に終了しているので《外伝》という位置づけになります。時系列でいえば,本家“文学少女”遠子先輩が卒業したあとの4月。部長となった心葉(このは)に惚れた新入生・菜乃(なの)が勢い込んで文芸部に入部する――という設定。今回は近松門左衛門曽根崎心中』をめぐって展開する。
 不覚にも,真相解明の場面で滂沱の涙。人目のあるところで読むのは失敗でした……。
 現役部員2人が,この事件をあの“文学少女”ならば如何に読み解くだろうか? という思考方法をツールとして真相に迫っていく。依然として推理小説として読むにはフェアーではない構造をしてはいるものの,探偵(=心葉)と助手(=菜乃)という配役が出来たことによってミステリーとしても読める。《本編》もミステリー仕立てではあったのですが,遠子先輩の“文学少女”というキャラクターが立ちすぎていたので,結末部においては「“文学少女”の想像」の支配が勝ってしまい,ミステリーに必要な論理構造を受け取りにくかったのだということが比較によって理解される。
 この外伝,続きがとても楽しみです。