佐藤久光 『遍路と巡礼の社会学』

 ここしばらく宗教学関係の書籍を集中的に読み込んでいます。最初のうちは大学図書館にある文献を漁っていたのですが,そもそも仏教とか神道に関する文献は平成に入ってからのものが少なくて困りました。仕方なく何冊か自費で買い込んだのですが,そのうちの1冊が佐藤久光(さとう・ひさみつ)『遍路と巡礼の社会学』(ISBN:440954067X)。
 文献調査をしてみたところ,前田卓が1971(昭和46)年に著した『巡礼の社会学』が(本来的な意味での)聖地巡礼に関する先駆的業績らしいということが分かりました。この本は文学部の図書室で見つけて読了。前田は,堂内に打ち付けられていた納札を丹念に検分することにより江戸期における巡礼者の行動様式を明らかにするなどしている。
 そして,前田の弟子筋に当たるのが佐藤久光であり,前田が手を付けた研究を発展的に継承している。日本における三大巡礼たる「西国巡礼」「秩父巡礼」「四国遍路」につき,各霊場の成立や江戸時代の動向のみならず,明治以降についてまで詳細な検討を行っている。微に入り細に入り考察が行き届いており,頭が下がる。現時点では,佐藤の手になるこの1冊を読めば聖地巡礼をめぐる大凡の研究動向を掴めよう。