麻耶雄嵩 『あいにくの雨で』

 何か読み直さないと収まらない――ということで,麻耶雄嵩(まや・ゆたか)『あいにくの雨で』(ISBN:4061819070)を読む。思えば『翼ある闇』を読んだときには「ふざけんな」だったものが,今では新本格に救いを求めるときに手に取るものへと変わっている不思議。
 雪の降る夜に廃墟の塔で人が死んでいた,という〈雪の密室〉もの。全14章で構成されるうち第13章が冒頭に置かれているという倒叙構成。あからさまにミスリードを仕掛けてきます。心して掛からねば,と思ったら,物語の本筋は生徒会の諜報活動に。こんな陰謀蠢く高校は嫌だ。そうこうするうちに事件は連続殺人へと発展し,第12章,そして第14章へ。小規模ながらもカタストロフィを仕掛けてあって,ストーリーとしては綺麗にまとめられておりました。むしろ心配になるのは,この2人の今後ですが。