麻耶雄嵩『隻眼の少女』

 先週末,図書館の司書さんが書店まで直接,買い出しに出かけておいででした。今回は何を買ってきたのかを見に行ったところ,新着図書の棚に並んでいたのが麻耶雄嵩(まや・ゆたか)『隻眼(せきがん)の少女』 司書さん自身はあまりミステリーを読まない人だし,在校生がリクエストをかけるような本でもない(蔵書傾向からし本格ミステリーマニアが校内に潜んでいる気配はしない)。尋ねてみたところ,〈日本推理作家協会賞〉ならびに〈本格ミステリ大賞〉を受賞した作品だから,というカタログスペックで選んできたものらしい。
 『翼ある闇』は(例えでなく)壁に向かって投げつけたなぁ,と思いつつ出だしを読んでみる。自殺願望を持つ語り手が因習の受け継がれる寒村を訪れたところ,伝説の岩の前で水干(すいかん;表紙の平安装束)を着て片眼は義眼な本日デビューの探偵少女と出会う。
隻眼の少女
なんですか,このキャラが立ちまくった探偵は(^^; あまりに面白そうだったので借りてきました。
 土曜日の午後,家にこもって読了。やっぱり麻耶雄嵩麻耶雄嵩でした。ミステリーの作法を踏まえたうえでぶち壊しにかかってくる。でも,本作については,苦々しさ(フザケヤガッテコノヤロウ)というより切なさが読後感を支配する。1985年と2003年の二部構成となっていることからして読み進めるうちにある想像が生まれてくるのですが,それすらも仕組まれた罠で,結末には崩れ落ちそうになりました。
 「賛否こもごも」と言いたくなる作品ですが,結末でゾクゾクするミステリーを久しぶりに堪能しました。それにしても,男って哀しい生き物だね……