有栖川有栖 『マジックミラー』

 年末年始には風邪をひいて家にこもっておりまして,有栖川有栖(ありすがわ・ありす)の〈国名シリーズ〉を7〜8冊ほど読んでいました。読んでいる最中には楽しみましたが,読了後にこれといって感想も無く,古本屋へ持っていくもの箱へ。
 そんななかで『マジックミラー』*1だけは手元に残しておこうと思いました。第7章「アリバイ講義」のために。
 作品については,もはや今日においてトラベルミステリーは厳しいなぁ,というのが率直なところ。探しさえすれば別な経路があるだろうというのが予め分かっていると,興味が湧かない。昭和の中葉に時刻表トリックが脚光を浴びたのは,航空機に乗ることが特別だった時代背景もあったからだろう。本作では「切符についた指紋」という要素を加えることで,ようやく乗り切っている。

*1:ノベルス版 ISBN:406181480X,文庫版 ISBN:4061853902