Barcelona

 海外在住日記。たまにはスペイン在住者らしいことを。日帰りでバルセロナまで旅してきました。
 06時40分バレンシア発の高速列車ユーロメッド(Euromed)に乗り、所要3時間でバルセロナ(サンツ駅)に到着。
 10回回数券(T-10)を購入して地下鉄に乗り、10時20分、カタルーニャ音楽堂(Palau de la Musica Catalana)へ。詳しくは後述しますけれど、ここ、入場予約制なもので今まで入ったことが無かったのです。午前中の早い時間帯に行けば大丈夫ということだったので、まずは駆けつけた次第。当日券(14時30分入場)を無事入手できました。ちなみに観光シーズンには早い平日でしたので、午後の分でしたら当日券が残っていました。
 少し時間が空いたので、エスパーニャ広場からFGCカタルーニャ鉄道に乗り、11時03分コロニア・グエルへ。駅からは青い足跡が案内してくれるという、お茶目なところです。名前から分かるように、ガウディ(Antoni Gaudi, 1852-1926)の建築です。「コロニア」というのはコロニーと同じ。この地に建てられた繊維工場に付随する施設群が、ガウディとその弟子達によって造られているところだそうです。が、ちょっと作為的すぎ。もともとは知る人ぞ知る隠れた見どころだったそうなのですが、このところのガウディ旋風に乗って大改装を施している真っ最中。おかげで、なんか嫌みな観光地と化していました。中心になる教会堂にしても、修復修繕工事ならともかく、「ガウディの後に付け加えられたものを取り去る」という狂気じみたことをやっています。それでコンクリートと鉄骨で補強をしていたりするので、年月に見合った風格が消え去っています。おまけに、入場料を払わないやつを近づけないように柵が巡らせてあるというのは考えもの。人が気軽に立ち寄れない教会というのは、宗教の目的からずれているように思うんですよね。そんなわけで、後期モデルニスモ建築を見て回ることができたものの、方向性のずれが気になって仕方がありませんでした。

 12時29分、エスパーニャ広場の近くにある「カイシャ・フォーラム」で開催されているダリの特別展を見にいく。画家サルバドール・ダリSalvador Dali)は、1904年、フランスとスペインの国境に程近い町フィゲラス(Figueres)で産まれました。今年が生誕100周年というわけです。今回の旅行の主目的だったわけなのですが、すぐに出てきました。はっきり言って、全然わからない。フィゲラスのダリ美術館は色々な仕掛けがあって楽しめたのですが、こういう展示会になってしまうと私に近代美術は理解できないというのが明瞭に自覚できます。
 もやもやした気分を吹き飛ばすには食い気でしょう、ということで、いま食通の間で話題になっているチョコレート屋さんカカオ・サンパカCacao Sampaka)へ。店内には喫茶も設けられています。で、お品書きの筆頭に堂々と書かれているチョコラテ・トラディシオナル(2.2ユーロ)を注文――って、仮にもスペイン事情に詳しい人間にあるまじきことをやってしまいました。チョコラテ(Chocolate)というのは、スペイン風ぜんざいとも訳されることがあるほどに濃厚で、かなり固体に近い液状のホット・チョコレートのことです。要は、冬の食べ物。汗ばむほどの陽気が訪れている日に頼むべきものではありません(^^;) 正直なところ、味が抜きんでているとは言い難いです。店のセンスはいいし、飾り付けも綺麗なんですけれどね。
 14時30分、いよいよカタルーニャ音楽堂へ。所要時間50分のガイド・ツアーで館内をまわります。最近は、バルセロナというとガウディという固定観念が出来ていて嫌なのですが、この音楽堂はガウディと同時期に活躍しモデルニスモ建築の雄として並び立つドメネク・イ・モンタネルの作。その華麗さ故に、ユネスコ世界遺産にも登録されています。もう、素晴らしいの一言。バルセロナに来たのなら、音楽堂見学のために日程を調整すべきです。同じくドメネクの手になるサン・パウ病院も、これまた必見。なのに、日本では馴染みがないのが残念でなりません。ところがところが、音楽堂で改修工事をやっていると思ったら、雰囲気を壊してしまいかねない新館が付け加えられてしまったのです。クロークやエレベーターなどが必要なのは理解できるのですが、ちょっとそぐわないように感じました。
 16時、バルセロネータに出て、適当に見つくろったレストランで遅めの昼食。海沿いだから魚介類にしようと、1皿目にメヒジョン(ムール貝)、2皿目に海鮮パエージャを注文。皿にうずたかく積まれたムール貝を食べ終えたところで、パエージャの具として再びムール貝が出てきた時はどうしようかと思いました(笑) デザートはクレマ・カタラン。カスタード・クリームの上に砂糖を振りかけ、バーナーの炎であぶってカラメルにするというお菓子です。言わなくても分かると思いますが、かなり甘いです。食後のエスプレッソ珈琲は必須。ビールとパンがついて、11.1ユーロでした。
 栄養を仕入れたところで、17時18分、アントニ・タピエス美術館(Fundacio Antoni Tapies)へ。わざわざ確かめるまでもなかったのですが、私に現代美術は向いていないみたいです。わずか数分で出てきました。
 18時、今春に開通したトラム(Tram)に乗ってみました。地下鉄3号線の大学地区より北西に向かって伸びています。路面電車の中でもLRTと呼ばれる最近注目の集まっている型です。日中の運行間隔は5分おきで待ち時間が少ない、利用客もそこそこ多い、専用軌道になっている区間が多いうえ交差する道路も少ないので走行は快適、そのうえデザインが良い。信号の調節をしていないようでしたが*1 、それでも次世代交通のサンプルとして参考になりそうです。LRTには、地下鉄より利用者に優しく、建設費が少なくて済み、街の景観に寄与する、と利点は多いです。バルセロナで、路面電車の良さを再認識してきました。
 さて、このトラムが出来たおかげで行きやすくなった場所が「ウォールデン7」です。とんでもなく奇抜な形状の集合住宅。話には聞いていたのですが、実物を見ると、やっぱり変でした。将来、建設中のトラム3号線にその名も“Walden”という停留所が出来るので、見学には便利になりますね。
 トラムの撮影に熱中していたら都市間バスに乗り遅れてしまったので、20時30分サンツ駅発のユーロメッドでバレンシアへ帰還。
http://sowhat.magical.gr.jp/spain/s_es_2004.html〔写真〕

*1:ところによっては、路面電車の走行を優先させるため、車両が近づくと自動車側の信号を赤にするところもあるのです。