細雪 (3)

 谷崎潤一郎細雪(ささめゆき)」《下巻》(ISBN:4101005141)読了。
 久方ぶりに、三女・雪子のもとへ縁談がやってくる。対する四女・妙子には、暗い影が落ちる。妙子の気をひくために実家の店から宝石を持ち出していたことが発覚した奥畑は勘当。妙子も赤痢に罹患。そして、妊娠。それというのも、奥畑に愛想をつかした妙子が一計を案じ、バーテンダーをしている男・三好を誘惑したものであって、別れる口実を作りあげようとかかったものであった――
 物語は、やや唐突に幕を閉じる。その余韻の持たせ方が良い。
 全体を通じての主人公は雪子であり、次女・幸子がストーリー・テラー。長女・鶴子は旧時代の、そして妙子が新時代の象徴という位置づけになろうか。一見すると、ヒロインを演ずる雪子が大団円を迎え、妙子は日陰に転じたかのようであるが、それはある一瞬における現象に過ぎないのかもしれない。終幕直前、二人の間にコントラストがあるから、そこに「幸福」と「不幸」があるように見える。しかし最後の一段落は、人生の流転の激しさを暗示しているのではなかろうか。などと、色々に思いを巡らす。
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