イタリア旅行記 (2/6)

 ローマ滞在2日目。
 起床後、まずは朝食。地上階の食堂でいただきます。ビュッフェ形式で、パン、チーズ、果物、ヨーグルトを自由にお取りくださいというもの。シロップ漬けのフルーツをたっぷり摂って、体調を整える。旅行中は、どうしても繊維質が不足しますからねぇ……

▼ ヴァティカン
 ホテルを出て、バルベリーニ駅(Barbelini)から地下鉄A線に乗る。ローマの地下鉄は、割と治安が良いように感じました。チプロ駅(Cipro)にて下車。駅を出て右手に進み、正面の階段を昇ると、ヴァチカン市国の城壁が見えてきます。そこから緩い坂道をくだっていき、08時45分、博物館の入口に到着。ところが、順番待ちの列は東方向へと伸びていたのでした。北東の角を曲がっても人の列は続き、最後尾はレオーネIV世通りに達していました。その長さ、およそ200mほど。これは相当待たされるかと思いきや、さくさくと入場していき、わずか20分の待ち時間で中に入ることができました。団体旅行客が押し寄せてくる前に来たのが勝因だったようです。入場料12ユーロ。
 ヴァチカン博物館は、美術の宝庫。ここには20近くもの美術館と博物館があり、総体として1つの施設を形作っています。ここはじっくり楽しみたかったので、日本語の音声ガイド(6ユーロ)を借りることにしました。ところがここで一悶着。身分証明書を預けることになっているのですが「パスポート本体もしくはクレジットカードを差し出せ」というのです。ISICの国際学生証が通用しなかったのには閉口しました。
 まずは左側の通路へ。上空から見ると『日』の字の形になっていて、2つの中庭を囲んで建物が建っています。といっても、南側の中庭は駐車場として使われていて、見た目がよろしくないですが。入口は北西端に、南端にシスティーナ礼拝堂があるのですが、その長さ400mほどの回廊が、すべて絶賛ものの絵画やタペストリーで覆い尽くされているのです。ラファエッロの間(Stanze di Raffaello)の壁画はもちろん素晴らしかったのですが、私は「地図のギャラリー」がお気に入りでした。1583年に完成した空間で、天文学者達が描いた世界地図が40点あるところです。当時の地理的認識がわかって面白かった。そしていよいよシスティーナ礼拝堂(Cappella Sistina)へ。正面には祭壇画『最後の審判』、天井画には『アダムの創造』がある場所です。でも、思ったより小さい――というのは正しくないか。大きな絵であるために全体を見ようとすると後ろに下がらねばならず、天井が高いために細部が良く見えないのです。しかも人が多くて、最適な位置に立てないし。これらミケランジェロの傑作は、事前に画集で丹念に眺めておいた方が良かったかも。
 反対側の回廊を通って出口へ向かうことになりますが、こちらの通路も美術品でいっぱいです。途中、たっぷり写真が収録されている日本語版ガイドブックの大型本を購入(25ユーロ)。
 礼拝堂に行って戻ってくるだけで、2時間がかかりました。朝一番ですから、別に混み合っていたわけではありません。気に入った美術品だけを選んで鑑賞するのでも、それだけの時間がかかるのです。オーディオガイドの解説も充実しているので、すべてを聞いていたら日没までかけても時間が足りないでしょう。ここでいちど火照りを冷まそうと思い食堂へ。ピッツァを食べながら、先ほど買った画集を眺めて、休息をとりました。
 続いては「ベルヴェデーレの中庭」を囲んで建つ施設群へ。中でも絵画館(Pinacoteca)は秀逸。面白かったのはクレッティ(Donato Creti)の作品“Osservazioni Astronomiche”。18世紀に描かれたもので、夜間に惑星の観測をする人々を描いた連作です。なんでも、天体観測所の必要性を訴えるために制作されたもので、事実、この絵がローマ教皇に献上された後、観測施設の設置が決定されたとか。
 ひと通り満足して、博物館を出たのが12時40分。心底堪能するには、もっと時間をかけたかった〜
 道すがらジェラートを購入(1.8ユーロ)。郵便局で切手を買おうとしたのですが、長蛇の列で断念。そのままサン・ピエトロ大聖堂へ。ここも待たされると聞いていたのですが、昼食時になっていたせいか、待たずに入場できました。ここに来たら、まずはクーポラ(丸屋根、天蓋)に昇らないと!(入場料5ユーロ) エレベーターを使っても330段は歩かなければならないのですが、その苦労に見合うだけの絶景が楽しめます。
 それから大聖堂の内部へ。ミケランジェロの彫刻『ピエタ』が楽しみだったのですが、これまた離れていまして、質感がわからなかったのが残念です。
 寺院を出たのが15時30分。間食をとったとはいえ、さすがに空腹を覚えてきたので、遅めの昼食に。手頃なバールに入り、パニーニと飲み物を購入(3.5ユーロ)。店の前に置かれたベンチに腰掛け、周囲の景色を見ながら頬張る。

▼ 歴史地区の散策

 16時07分。次は、すぐ近くのサンタンジェロ城(Castel Sant'Angelo)へ(5ユーロ)。
 それからテヴェレ川を渡り、16時58分、アルテンプス(国立博物館)へ。古代の彫刻が集められているのですが、鼻が欠けたものが多いのが興ざめ。でも、『水浴するアフロディーテ』は見事でした。下卑た発言で申し訳ないのですが、裸婦像の曲線美は至高のものだと思うん。
 ナヴォーナ広場で噴水を見てから、パンテオン(Pantheon)へ。紀元前27年から25年にかけて建造されたもので、すべての神々を祭る神殿(入場無料)。こんな古いものが、さりげなく残っているところにヨーロッパの歴史の深さを感じます。でね、ここは丸天井になっていて、頂点には採光のために直径9mの天窓があいているのです。たまたま私の隣に立っていた日本人が、係員さんを呼び止めて「あの穴、工事のために空けたんですか?」と聞いていて、吹き出しそうになりました。確かに、雨が多い日本の発想からすると、屋根がふさがっていないのは不安でしょうね。ここは地中海性気候ですから、降雨のことはそれほど心配しなくて良いのです。
 それから、サンルイージ・デイ・フランチェージ教会、サンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ教会と、歩いて数分の位置にある2箇所を訪ねました。どちらも、美術館と呼んでも差し支えないような絵で身廊が飾られておりました。観光名所ではないため訪れる人の数も少なく、落ち着いて眺めていられます。しかも入場無料! いや、もともと教会は祈りを捧げるための場所ですから、拝観料を徴収することの方が不自然なのですけれどね……
 18時30分を過ぎて薄暗くなってきたので、ここらで観光を終えることにしました。トレヴィの泉から少し離れたところで飲食店を探し、「中意飯店」に入る。野菜炒め、チンジャオロース、炒飯、ビールで夕食。やはりここでも食後酒を上乗せで置いていくというイタリア方式の会計でしたが、それでも12.7ユーロで済みました。中華料理店は安く食べられるので、旅行者の強い味方です(はぁと)