愛の四季

 瀬戸内寂聴愛の四季」(1988-94年、ISBN:4041265088)読了。
 読んでいて、どうも違和感がある。尼僧の書いたものという感じがしない。神様や仏様の影が薄すぎる。それどころか、樋口一葉の「たけくらべ」の解釈を論じた『美登利の初店説への疑問』などは、あまりにも攻撃的だ。
 経歴を調べて、ようやく納得できた。21歳の時、小説を志して夫と子を捨て、リベラルな女性を描き続けてきたのだという。50歳を過ぎたところで仏門に帰依し、本書の執筆時で出家から11年。ちらちらと見えていたのは、仏の教えを説く者ではなく、文筆家としての顔だったのか。
 その混交が筆者の魅力なのだろう。