それでもしたい?! 結婚

 岸本葉子「それでもしたい?! 結婚」(1995年、ISBN:4061859234)読了。1992年に出版された「女が結婚したいと思うわけ」に加筆し、改題したもの。
 筆者は、30歳を少しばかり超えた女性(執筆当時)。制定されたばかりの男女雇用機会均等法(1985年)を背景に、「女性初の」という言葉が踊っていたころの世代。数年前までは「結婚しないの?」だった質問が、「どうして結婚しなかったの?」と変化しはじめた今日この頃。 別段、結婚したくなかったわけじゃないし、付き合っていた男性がいなかったわけでもないけれど、ただ何となく《結婚》には至らなくて…… というパターン。恋に恋する乙女を過ぎて、来るべき老後が見えてきたら思わず生命保険に入っちゃった。でも《結婚》に未練はある。そんな微妙なお年頃にある筆者が、胸のうちを面白おかしい語り口で綴るエッセイ。
 本書の二年後、筆者は「やっぱり、ひとりが楽でいい!?」という本を出している。本書の帰結として予想できたけれど、やっぱり。岸本は《結婚》への気運が盛り上がるのは2つの山があると述べている。まず(1)25歳前後でみられる夢の実現としての結婚。学生時代からの延長として行われるので、言うなれば足し算。それに対して引き算もある。というのも、(2)夫の定年までに子供が育っていないと困るから、逆算すると35歳で結婚しておかないと…… というもの。この2つの時期を見送ったら、結婚しない人生を否応なしに選択せざるを得ないものね。つまりこの本は、2つめの山にあった著者が、その時点での心境を告白したものなのです。切り口は、かなりスルドイ。主観と客観とが巧妙に使い分けられており、類書の中では抜きん出ている。
書評)id:camin:20040813#p1