NEET

 学会参加のため、東京へ。
 機内で、玄田有史=曲沼美恵『ニート―― フリーターでもなく失業者でもなく』(ISBN:4344006380)を読む。厚さの割に内容が少なく、羽田空港に着陸したところで読了。
 肩すかしをくらったような気分。というのも、全6章のうち「ニート*1 について触れているのは第2章まで。しかも、第2章はルポルタージュなので、「ニートとはどのような存在か」を分析的に論じているのは実質的に第1章だけである。
 第3章から後は「14歳」に焦点をあてている。ニートの発生を抑制するためには、義務教育段階において、早期に社会適応力を身につけさせる必要があるということだろう。具体的な事例として、富山県兵庫県で行われている取り組みを紹介している。その趣旨は理解できるし、共感できる。しかし、どうも看板(書名)に偽り有りという気がしてならない。半分ほどは、村上龍13歳のハローワーク』(ISBN:4344004299)と重なる話題であって、新鮮味は薄い。玄田氏の前著『仕事のなかの曖昧な不安』(ISBN:4120032175)が、労働経済学の見地から多大な示唆を与えてくれる好著であったことも、本書に対して(相対的に)物足りなさを感じる要因だろう。
 なるほど、本書によってニートと呼ばれるものが存在することは明らかになった(存在はしていたが認識されていなかったものに名前が与えられた)。本書の意義はこの1点にあり、それ以上のものではない。
 つまるところ、この情報量で1575円という割高な価格設定が不満なわけです(笑)

*1:NEET; Not in Education, Employment, or Training