森博嗣

幻惑の死と使途 (講談社ノベルス) 幻惑の死と使途 (講談社文庫)
幻惑の死と使途
 S&Mシリーズの6作目。箱抜けを得意とするマジシャンが、番組撮影中に殺害された。そのうえ、葬儀では遺体までもが棺桶から消失する――
 流れが美しい。途中に説明の不明瞭な箇所があったけれど、トリックの性質からやむを得まい。結末がやや強引な感じを与えるが、そのために冒頭の独白があることを思えば帳消しにしても良いだろう。
 何より、加部谷恵美の聡明さが良い。だって、まともだし……

夏のレプリカ (講談社ノベルス) 夏のレプリカ (講談社文庫)
夏のレプリカ
 S&Mシリーズの7作目。西之園萌絵に匹敵する頭脳の持ち主である女子大生、簑沢杜萌(みのさわともえ)がゲスト主人公。この2冊は並行する時間上の事件を取り上げるため、もう1つの時間軸を彼女が語る。
 事件は別々なものであるため、続けて読む必要はない。しかし、なぜ同じ夏に事件を同時発生させたのかを考えると興味深い。物語構成のうえでは、確かにトリックの一部を為しているのだから。物語を語る視点の違いが、文体の浮遊感となって表現されていることも面白い。