極楽スペイン/ポルトガルの暮らし方

 書店で海外紀行の棚を眺めていたら,見覚えのある風景が。これ,バレンシアの市役所広場にある噴水だよ!
 そんなわけで表紙買いしてきたのが,東佐智代*1+日高充子*2『極楽スペイン/ポルトガルの暮らし方』(山と渓谷社ISBN:4635240851)。
 表紙をめくると,そこにはバレンシアの地図。裏表紙の側には,マルベージャとリスボン。この3都市における日本関連情報が紹介されることは希有なことで喜ばしいのだけれど,いったい本当に利用されるのか心配になる。
 取り上げられている場所の偏り方もすごい。マドリッドバルセロナが,まったく出てこない。登場するのはコスタ・デル・ソル(フエンヒローラ),コスタ・ブランカアリカンテ),バレンシア――と地名を並べても伝わらないか。『日本での暮らし方』という本で,札幌と富山と佐賀が紹介されているようなものだと思ってください。
 でも,この偏り方がいい。
 私自身,大都市が嫌いで,バレンシアという地方都市に留学しました。「なんとなく」暮らすなら,大きすぎず小さすぎもしない中くらいの街に住むのがいいと思う。そんな選択をした人達の実例を集めている。背伸びしたところがなく,地に足がついた暮らしが伝わってくる。そう思いながら読んでいたら,知り合いが出てきて驚きましたけれど*3
 この本を支えているのは“No pasa nada”(何でもないさ)という前向き思考。かといって駆り立てているわけでもなく,肩の力をスッと抜いてくれます。したたかに生き延びるコツなどは書かれていませんので,スペイン暮らしに夢を見ている人には,物足りなく感じられことでしょう。でも,この本から聞こえてくる「どうにかなるよ〜 大丈夫だよ〜 はにゃ〜ん」という囁(ささや)きに乗せられると,ふらふら〜っと空港に立っていて,気がついたら何年も日本に帰っていないや,ということになっちゃうかも。じゅうぶん麻薬成分を含んでいます。Con uidado!(気をつけて)

*1:あずま・さちよ。ライター,通訳・翻訳業。1966年生まれ。同志社大学文学部卒。1989年にマドリッドへ語学留学。そのままスペインに住み続け,現在はサラゴザ在住。

*2:ひだか・みつこ。テレビドラマの原作・脚本家。1946年,東京生まれ。ポルトガル在住10年目。

*3:「手作りジュエリーの職人」で登場する美津穂さんとは,一緒にワインを飲みに行ったことが…… 料理研究家の茶多さんは,直接会ったことはないけれどMLの有名人だし。