パクス・ロマーナ

 塩野七生(しおの・ななみ)『ローマ人の物語――パクス・ロマーナ』を読了。
ローマ人の物語〈14〉パクス・ロマーナ(上) (新潮文庫) ローマ人の物語〈15〉パクス・ロマーナ(中) (新潮文庫) ローマ人の物語〈16〉パクス・ロマーナ(下) (新潮文庫)
 権力基盤を手中に収めたオクタヴィアヌスが,国父アウグストゥスとして帝政ローマの礎を築いていく時期について。
 初代皇帝という後世からの呼び名とは裏腹に,派手な振る舞いが見られない。それ故,個人の伝記にすると冴えない存在。それを,塩野が作家という視点から観察し,想像力で繋ぐことにより再構成を試みている。そこで語られるのは「時間をかける」「実利を取る」ということの意味。そのコントラストとして,「血の継承」という妄執に囚われた老人という一面を描いているのも興味深かった。