試作品少女

 ゆずはらとしゆきid:yuz4:20051015)+宇佐美渉id:usami_wataru:20051019)『試作品少女――空想東京百景』(ISBN:4576051768)を読む。
 架空の平行世界における「昭和38年・東京」を舞台とした作品。紹介については著者自身が行っているし,第0章を読むこともできる。あ,言い忘れてましたけれど《ジュブナイルポルノ》です。
http://usami.halfmoon.jp/tokyo/
 何かをやろうとしているのはわかるのだけれど,何だかよくわからない。
 この不明瞭な感覚は,同じく〈ゆずうさ〉の組み合わせで描かれた『ペンデルトーンズ』*1が与えるものと同じ。むしろ,小説を主体とする本作の方がより明確に薄っぺらさを伝えている。
 以前,『ペンデルトーンズ』を読んだときに否定的な見解を述べたことがある(id:genesis:20041103:p1)。その後,更科修一郎*2が,「これはギャルゲーの構造を漫画で表現しようと試みたものだ」という趣旨のことを述べていたのを読んで,なるほどと思った*3

 『試作品少女』ってのは「オタク向けのポルノグラフィの分析と実践」です。それを「使う」わたしたちのお話でもあります。批判的に描かれているわけでもなく、好意抜きで描写したらそこはかとなく残酷だったというだけのことではなかろかね。
http://d.hatena.ne.jp/stupa/20051025

 というのは,上述のことと同旨を言うものと解される。
 序盤,格好付けた主人公(ガンスリンガー)のもとに「犬耳ランドセル首輪ホムンクルス少女」と「ツインテールふりふりツンツン娘」がやってきて××する。中盤では,お姉さんキャラとも××。××する理由は,あるような無いような。なるほど,『試作品少女』がギャルゲーだったとしたら,ごくありふれた作品に見えるかもしれない。それが小説という媒体で表現されると,畸形ぶりが露わになるということなのだろうか。
 構造分析の教材に使うならばともかく,単独の作品として面白いと評価するには非常に躊躇します。まぁ,こうした感想を抱くであろうことは読む前から予想できていたのだけれど,宇佐美さんの表紙に魅了されて買っちゃったん……。私,〈どうぶつ耳娘〉には弱くて。

▼ おとなり書評

 殺し屋の内面と平行世界を扱った内容で、尖がったエロゲとかファウスト系といった風味。〈中略〉「ジョブナイルポルノ」と銘打ってはいるんだけど、ファウスト系の枠内でも普通におもしろいのよな。これなら、むしろエロを強調した作りにしない方がいい予感が。
http://www2e.biglobe.ne.jp/~ichise/book/2005_10.html#d28_0

 え〜っと,こういうのを「ファウスト系」と分類するんでしょうか? 親しんでいない分野なので,判断できないのです。それはさておき,いちせさんが述べておられるように非えっち部分を手厚くしたら,凄い作品になりそうな感じはあります。


 ところで,11月20日に開催される第四回文学フリマに参加される予定の方で,代理購入してきてくれるような心優しい人はいないかなぁ。『Natural Color Majestic-12』が読みたいん。
http://parallelloop.com/

*1:http://usami.halfmoon.jp/pendletones/

*2:『ペンデルトーンズ』を単行本化した際に編集をしたのが更科。

*3:出典を探したのだけれど見当たらない