まるくすタン

 おおつやすたかまるくすタン 〜学園の階級闘争〜』(ISBN:4882030446)を読む。
 19世紀の生んだ偉大な思想家カール・マルクス*1を〈萌えキャラ〉に仕立ててみようという趣向。国家を学園に,資本を恋愛に,資本家を生徒会長に置き換えることにより,「持たざる者」ならぬ「モテざる者」の闘いが繰り広げられる。*2

「この学園における女生徒の社会的活動は,その下部構造(下半身的欲求)によって規定・抑圧されているんだわ!」*3
初版の帯より

 とはいえ,これで終わっていたら「そこそこ」な評価で終わっていただろう。本書の真骨頂は,まるくすタンの思想が「えんげるすタン(攻)×まるくすタン(受)」な同人誌を媒介として受け継がれていく様を描く後半部。麗人な〈れーにんタン〉,ツインテールな〈とろつきータン〉,ぼそぼそキャラでオーバーオールな〈すたーりんタン〉らが闘争を繰り広げる。やはり,思想よりも政治の方が茶化し甲斐があるようだ。
 生徒会長の津在(つあり)さんが,学内の不満解消のため東の端の方にある弱小校と対外試合をさせたらまさかの敗北,それではと占い研究会の部長にそそのかされて体育大会にも出場させてみたところ敗退に次ぐ敗退――。これで「くすっ」となる人ならば楽しめることでしょう。私は,『まるくすタン』を読んでロシア革命史の全体像が掴めました。世界史の参考書より実用的(笑)
 ただ,文章そのものは出来が良くありません。史実に合わせるために,かなり強引なところもあるし。そういうことは目をつむり,パロディとして楽しみましょう。よくぞ,このネタで押し切ったものだと作者を褒めてあげたい。
 なお,年齢制限なしではありますが性刺激的な表現が含まれています*4
http://www.jcninc.co.jp/~a-kiba/lab/lab2.html


▼ おとなりレビュー

*1:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%82%AF%E3%82%B9

*2:あまりに見事に整合しているので,本田透の主張する「恋愛資本主義」は正しいような気がしてきた。

*3:マルクス主義においては,生産関係(下部構造)によって社会形態(上部構造)が決まるとする。

*4:性表現の含有度は『魔獣戦士ルナ・ヴァルガー』くらい――って,この説明,通じますかねぇ?(^^;