悪名高き皇帝たち[四]

 塩野七生(しおの・ななみ)『ローマ人の物語――悪名高き皇帝たち[四]』(ISBN:4101181705)を読む。
 ユリウス=クラウディウス朝の終焉についての章。中世にキリスト教というバイアスがかかったことにより皇帝ネロが悪者に仕立て上げられたのだと見る塩野は,若くして帝位についたネロを無邪気な《ギリシアかぶれ》として描く。
 興味深いくだりは,「ローマ人からみたキリスト教徒」だった(169-171頁)。ローマ人はエトルリア人から多くを吸収したが,人身御供(生け贄)の習慣は学ばなかった。このようなローマ人の価値観からすると,パンを「キリストの肉」として食べ,葡萄酒を「イエスの血」として飲み干すだなんて,キリスト教なんて野蛮な!という感覚だったろうと紹介する。