KemonoMix

 見過ごせない話題が出てきたので,少しばかり。
 実は私,前世紀には「ケモノものファンサイト」を開いていたことがあり,98DOS時代には「ケモノものゲーム」を専門にレビューしていたのですよ*1。そんなわけで,次の件に関しては一家言あります。

でもまあ、正直な気持ちを言えば、ケモノ耳なんか飾りに過ぎないと思う。
http://d.hatena.ne.jp/trivial/20060310/1141939885 「ネコ耳、ウサ耳、ケモノ耳」
http://d.hatena.ne.jp/trivial/20060310/1141939886 「着脱自在のネコ耳」

指摘されているように、ネコミミは強い着脱可能性を持つ外見的属性ではあるのですが、ある程度の内面の規制が行われるという点で中々興味深いところであります。
http://d.hatena.ne.jp/cogni/20060312/p5 “What is it like to be with Nekomimis? ”

 ここでお二方が想定されているものは,ケモノもの愛好家の間ではまがい物扱いされる存在です。
 「ケモノもの」愛好者団体には,MGIさんが提唱された“KemonoMix 30% Over”というマニフェスト(政策綱領)があります*2。これは,完全なヒトを[0],完全なケモノを[100]として指標化したうえで,ケモノ混合率30%以上のものこそが真の「ケモノもの」として愛でるべき対象である――という,大変に教示的なものでありました。
 この“KemonoMix”指標では,「脱着可能なネコミミ」は[10%]とされます。すなわち,ヒトがフェイクとして装っているに過ぎないのです。[30%]になると,体表面が毛で覆われたり,動物鼻になります。すなわち,ケモノの持つ魅力的な外見的要素が不可分のものとして融合する状態です。炎猫さんの著したマニフェスト『正しい獣道』が参照に値するでしょう*3
http://www.shippo.com/kemono_michi/index.html
 “KemonoMix”が[50%]を超えるものを尊ぶというグループもあります。一般に獣人ものと言うのですが,日本国外の方が盛んという印象があり,このレヴェルになると〈萌え〉の概念がかなり変化してきます。獣コミュニティ『FANG』では「獣人もの」の方が主流ですので,ご覧になってみてください。
http://www.fang.or.jp/
 ところが,1998年に『デ・ジ・キャラット』が登場したことでネコ耳が大衆化してファッションに組み込まれ,『動物化するポストモダン』が指し示すようなデータベース的利用が増加しました。このような耳&尻尾の現れ方は,二次的なものであると考えた方が良いかと思います。
 結局,何が言いたいのかというと…… 脱着可能なパーツに過ぎない耳ないし尻尾を用いて考察していたのでは,〈ふさふさ〉の魅力を理解することはできないだろう,ということです。
 なお,「ケモノもの」は外的特徴のレヴェルにとどまるものではないことは指摘しておくべきでしょう。物語のレベルにおいて“KemonoMix”が活かされていた例としては,フォア・ナイン(9999)*4の『GAOGAO! 3rd. ワイルドフォース』(1994年)と『カナン 〜約束の地〜』(1997年)があります*5
http://milky.milkcafe.to/gameisan/kanan.htm
http://gaogao.s58.xrea.com/
 なお,「ネコ耳の起源とバニーガールの関連性」だとか「ヒト耳とケモノ耳は同時に存在し得るか」については長い長い論争がありますので,軽々しく触れない方がいいです。不用意に手を出すと噛みつかれるかもしれません(^^;)


▼ 関連

 「ネコミミの着脱可能性(=飾り)と不可能性(=獣人)で魅力が変わるというのは、外部の内在化とでも言うべき面白い現象だと思います。」
 「個人的に指標となると思うのは Pierce の記号論です(中略)。icon(類似), index(強い因果関係), symbol(社会的な約束)の議論を援用するならば、眼鏡や獣耳というiconは、いつのまにか性格や行動などのindexを経て、symbolへと昇華した、という捉え方も可能であると思います。」
http://d.hatena.ne.jp/cogni/20060312#c

*1:忘れたい過去も混じっているので,あまり公にしていませんが……。

*2:かなり昔のことなので,残念ながら記録が残っていません。

*3:この文書を書こうとして,炎猫さんが2002年12月に逝去されていたのを知りました。ご冥福をお祈りします。

*4:ケモノもの専業ブランド。
http://erogamescape.dyndns.org/~ap2/ero/toukei_kaiseki/brand.php?brand=422

*5:原画はわつき彩雲さんが担当。