谷川流 『涼宮ハルヒの消失』

 谷川流(たにがわ・ながる)の『涼宮ハルヒの消失』(ISBN:4044292043)読了。〈涼宮ハルヒ〉シリーズの第4巻。
 長編。筋立てについては,タイム・トラベルを上手に味付けとして使っていると思う。でも,結末(の手前部分)に引っかかりがあるん。話の辻褄は合っているけれど,そもそもどうして××は時空の○○などという行為に出たのか。動機なんでどうでもいい――とうそぶいてみるものの,便利なキャラクターを便利に使いすぎていて……。〈ビルト・インされたデウス・エクス・マキナ〉だよなぁ。
 これが純然たるファンタジー世界であれば別に文句はないし,御都合主義を振りかざしてくれるならそれも良し。ところが,神坂一新井素子であれば盛り上がって大団円になりそうな場面なのに,どうにもしっくりこない。きちんと着地はしたけれど実は複雑骨折していました,みたいな。
 本作の場合,最後に働く〈現実〉へ帰ろうとする引力が,ファンタジーや御都合主義とは少し違ったベクトルで作用しているのだろうか(作用の結果が,現状の維持・肯定だしね)。この作品から得られる奇妙な感覚が『ハルヒ』シリーズの設定に伴うものなのか,それとも作者の能力なりスタンスによるものなのか。別シリーズと比較しながら読んでみないと,「谷川流」についての評価を誤りそうだ。