井口泰 『外国人労働者新時代』

 機内で,井口泰(いぐち・やすし)『外国人労働者新時代』(ISBN:4480058885)を読む。
 著者は労働省に入省し,GATTウルグアイ・ラウンドでの交渉に参加,外国人雇用対策課長を務めた後,大学教授となった人物。
 勤めて冷静な視点から書かれた本で,ルポルタージュの類は登場しない。可能な限りデータを示しながら,外国人労働者の実数や滞在年数,移動が起こるパターン,社会的統合の段階的変化などを問題の所在を解き明かしていく。また本書の特徴としては,少子高齢化による構造変化が収束に向かう2025年までの期間における外国人労働(より具体的には介護の担い手として外国人を受け容れた際に起こるであろう諸問題)を論じている点や,アジア経済圏における人口移動にも目を配っていることも指摘できよう。2001年に出版された少し古い著作だが,5年を経た今日でも思考の整理は十分参考になる。