高橋友子 『路地裏のルネサンス』

 高橋友子(たかはし・ともこ)『路地裏のルネサンス――花の都のしたたかな庶民たち』(ISBN:4121017307)読了。
 ルネサンスが開花する直前の時代を生きたフランコ・サッケッティ(Franco Sacchetti, 1330頃-1400頃)なる人物が書き残した『三百話』(Trecent novelle)を素材として,当時の市井の人々の暮らしぶりを紹介するのが本書。サッケッティが友人達を楽しませるべく書き残したワイ談,失敗談,教訓話などを織り交ぜつつ話を進める。
 著者は社会史が専門で,フィレンツェに留学して捨子養育院の歴史研究をしている。いわば「庶民史」の研究者。そうした事情からか,「子作りと子育て」と「売春とホモセクシャリティ」に各一章をあて,「犯罪と刑罰」という章においても強姦・姦通・堕胎・嬰児殺しなど女性の関わる話題について詳しく述べているのが特徴。
 知的な気晴らしに好適。