佐藤達夫=木俣元一 『図説 大聖堂物語』

 ここしばらくは,就寝前の時間を『図説 大聖堂物語――ゴシックの建築と美術』(ISBN:4309726429)を眺めて過ごしていた。佐藤達夫*1木俣元一*2の共著。
 1140年頃にパリを中心とする〈イール・ド・フランス〉地域で起こった芸術様式――後のルネサンス期の人々からは軽蔑の意味を込めて「野蛮人の様式」と呼ばれることになるゴシック(Gothic)建築を,豊富な図版とともに詳述する。
 線条要素(支柱に沿った垂直線)による壁面分割によって石の平らな面を排除することに心血を注ぎ,石の重みを感じさせない造り。石造建築の高さの限界(48m)への挑戦。壁ではない場所,すなわち「窓」という新しい表現手段の獲得。本質まで見通す著者らによる解説も実に読み応えがある。

*1:さとう・たつき。1952年生まれ。専門は西洋建築史(12世紀イール・ド・フランス地方の教会堂の内部空間)。現在,大同工業大学教授。

*2:きまた・もとかず。1957年生まれ。専門は西洋中世美術史(ゴシック聖堂の彫刻とステンドグラス)。現在,名古屋大学教授。