西尾維新 『ネコソギラジカル』

 西尾維新(にしお・いしん)の戯言シリーズ第6作『ネコソギラジカル』を読む。

  1. ISBN:4061823930 上巻「十三階段」
  2. ISBN:406182399X 中巻「赤き制裁 vs. 橙(だいだい)なる種(しゅ)」
  3. ISBN:4061824007 下巻「青色サヴァン戯言遣い

ネコソギラジカル (上) 十三階段 (講談社ノベルス) ネコソギラジカル (中) 赤き征裁VS.橙なる種 (講談社ノベルス) ネコソギラジカル(下)青色サヴァンと戯言遣い (講談社ノベルス)
 前々作『サイコロジカル』と前作『ヒトクイマジカル』がつまらなかったので期待せずに読み始めたのだが,期せずして面白かった。文章に淀みが無くなり,文勢が回復している。冒頭部分だけ読んで止めるつもりだったのだが,そのまま中巻の半ば程まで読み進める。結局,二晩で読了。
 これまでに蒔き散らかしてきた伏線を拾い集めつつ,結末へ向かう回。ボスキャラ西東天(さいとう・たかし)の配下「十三階段」が襲い来る。ちょっと登場人数が多いだろうと思ったけれど,作中の主人公に先手を打って言われてしまったので,その点についての異議は差し控えることにする。全3巻を手元に揃えた時,その厚さには唖然としたものの,実際に読んでみれば納得できる量であったし。
 西東天ホワイダニット(世界を統べる《物語》の終わり)については端から理解の埒外なので,それはそれとして留保しておきたい――というか,同意したら人間を廃業だろう。これは最早,《神々の戦い》だし。
 結末への道程は綺麗に片を付けていて好ましかったのだが,この【終幕】だけはいただけない。時間的に離れた平穏な場面を貼り付けておくことでハッピー・エンドを演出するのは,ちょっとね……。だって,それじゃ『ガルフォース エターナル・ストーリー』(ASIN:B00005HUZ2)なんだもん*1。望ましい未来の姿が【終幕】であるにしても,途中経過を省いてしまったら幻影だよ。効果的な演出ではあるけれど,物語では無いと思うんだよね。戯言遣いの本領たる《言葉》で「漆黒サヴァン」との物語を紡いで欲しかったなぁ。

*1:知らない方のために。『GALL FORCE ETERNAL STORY』(1986年,柿沼秀樹監督)では,終幕で三当事者による全面抗争にまで発展するが,主人公らは闘争の舞台となった惑星カオスを炎に包むことで終止符を打つ選択をする。このように本編は劇的に幕を引くが,いったん場面は暗転し,突如として現代らしき光景が現れる。そこでは,本編とは別な時間軸で暮らす7人の登場人物の日常が映しだされる――というもの。