新井輝 『ROOM NO.1301 #1 おとなりさんはアーティスティック!?』

 シミュレーターだなあと思います。とことん物語がなくて、「作者の手を離れてキャラクターが勝手に動き出す」という状態をひたすら描写している感じ。(中略)
 これも小説作品のひとつのありかただと思いますけど、物語とかテーマとかを重視する人にとっては耐え難い作品なのかもしれません。

http://d.hatena.ne.jp/Erlkonig/20070318/1174197785

 id:Erlkonigさんが期待する〈近代の遺物〉だったら,此処にいるですよ〜。
 もっとも“耐え難い”というのは 舞城王太郎煙か土か食い物』に対する印象(→id:genesis:20060829:p1)でして,そこまでの忌避ではありません。岩田洋季護くんに女神の祝福を!』も“どうにも受け付けない”作品でした(→id:genesis:20050329:p1)が,『1301』はシリーズ続作が特価で売りに出ていたら読んでもいいかな――というくらいには評価している。私にとって『ROOM NO.1301』は“どーでもいい”という位置づけで,お菓子に例えて言うならば素甘(すあま)。出されたら頂戴するけれど,自分から買って食べようとは思わない。
 物語(tale)よりも語り(narration)を楽しむための作品,なのでしょう。
 他にも「キャラが戯れている」作品というのはありますが,先に挙げた『護くん』の他『ぱにぽに』『苺ましまろ』等と比べても『1301』には〈えぐみ〉が全くありません。文体にしても,撥音・濁音や改行が取り立てて多いわけでもなく,極めて素直。評価をマイナス方向に揺らす成分を持たないのですね。ですから,この種の作品群を苦手とする私でも読了はできます。