横溝正史 『犬神家の一族』

 文学研究科の読書会へ参加。今回はミステリの古典を読んでみようということで,横溝正史(よこみぞ・せいし)の『犬神家の一族』がお題。
 市川崑監督による『犬神家〜』のイメージが強く刻まれていたが,原作を読んでみると冒頭からして雰囲気が異なる。だって,あの奇怪な遺言を残した犬神翁は,かつて衆道で寵愛を受けた美少年だった,とか出てくる(で,このことが原作ではかなり重要な意味を持っていたりする)。
 シナリオの運びに関しても,1950年から翌51年にかけて雑誌連載されたという成り立ちからくる〈次回への引き〉がアクションシーン(冒険活劇)として現れているなどして,比べてみると色々面白い。特に1976年の映画作品との比較では,1970年代中葉に到来していたオカルトブームを背景として原作の改変に繋がっているのだという指摘が参考になった。

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