北村薫 『冬のオペラ』

 北村薫(きたむら・かおる)『冬のオペラ』を読む。*1
 姫宮あゆみが勤める不動産屋の上に「名探偵」が事務所を開いた。引き受けるのは「名探偵」に相応しい事件だけだという。そんな名探偵は,週に3日のアルバイトをして生計を立てつつ,事件の訪れを待つ―― 
 名探偵も大変だなぁ。
 収められているのは3つの事件。「三角の水」「蘭と韋駄天」は《日常の謎》系統の雰囲気を保ちつつも,犯罪性を帯びた事件が起こる。結末において事件は解決するのに,やるせなさが残る。
 表題作「冬のオペラ」は,本書の半分を占める中編。ひたすらに文章が美しい。平易でありながら瀟洒(しょうしゃ)。綴られる言葉は誠に端整で,それらが流れ行く様は心地よい。

*1:単行本ISBN:4120022382,新書版ISBN:4125004366,中公文庫版ISBN:4122035929,角川文庫版ISBN:4043432054