支倉凍砂 『狼と香辛料』

 東京へ出張。移動中の機内で,明日会おうと思っている人が折に触れて広めている支倉凍砂(はせくら・いすな)『狼と香辛料』(ISBN:4840233020)を読む。
 冒頭,未だヒロインが出てくる前の時点で「これは面白い」と思う。西洋中世の行商人を題材にとってみたという設定も面白みの一つではある。しかし,何より文章の醸し出す気品が気に入った。綴られた言葉,句読点によって刻まれるリズム,描き出される情景などが総体として作用し,豊穣なファンタジー空間をもたらしてくれる。