ベルリン美術散歩

 昨年,映画『ヒトラー 〜最期の12日間〜』を観て,第二次世界大戦終了時におけるベルリンの荒廃を強く印象づけられました。それが意識の底で引っかかっていた時期に書店で見かけ,買ってきたのが水沢勉+津田孝三『ベルリン美術散歩』(とんぼの本ISBN:4106021277)。
 東西冷戦を象徴していた「壁」が崩れ,東側に属していた歴史地区への往来が可能になった。これを受けて始まった再開発の中で急速に整備されつつあるベルリンを,美術という点から特集したもの。

 ベルリンはパリを越えつつある!
 今や,この「美術館都市」に行かずして“美術”を語ることはできない。

――と,かなり扇動的な帯がかかっていました。
 パリとの比較はさておき……。ペルガモンの大祭壇に始まり,フランス近代絵画,中近東コレクション,ネーデルラント絵画やイタリア絵画,さらに近代絵画も豊富。建築にも目を向ければ,プロイセン王家の威光を体現する宮殿がある一方,ドイツの首都として復帰したことを象徴する国家施設も。
 一般的な観光ガイドを開いてみると,人気都市はライン川流域のフランクフルトやケルン,南方の古城めぐり,ミュンヘンとロマンティック街道――といった順になっていて,ベルリンは今でも《辺境》扱い。そんなベルリンを美術という切り口から浮かび上がらせることで,街から湧き上がる活気を伝えている。美術作品の総覧としては,なかなかに読み応えのある本に仕上がっておりました。


旅名人ブックス80 ベルリン/ドレスデン

 興味を持ったので,旅名人ブックス80『ベルリン/ドレスデン ドイツを牽引した文化都市』(ISBN:4861301513)も買ってきて眺めてみました。こちらは都市の景観を形作る名所の紹介が中心ですが,取り上げている場所については(そこそこ)丁寧な解説を添えるというシリーズ共通の特徴が的確に実行されている。この2冊を併せ読んだあとで『地球の歩き方』のベルリンの項を開いてみると何とも素っ気なく,大した魅力の無い街として写ります。