石持浅海 『月の扉』

 久しぶりにミステリ読書会に参加。『CRITICA 2』を『永遠の現在』との物々交換で入手してくる。
 さて,今回の課題図書は石持浅海(いしもち・あさみ)『月の扉』*1。ハイジャックした航空機の中,衆人環視の下にありながらトイレで一人の乗客が死んでいた――というもの。
 そこそこ人数が集まったのに,誰も事件のことはそっちのけで一顧だにしない。「この《動機》はどうだろう?」というところに関心が集まった後,「どうして石持はランキングの常連なのか?」というような話に。
 作中,ハイジャック事件の契機となる《師匠》という人物が出てくるのだけれど,作品からは《師匠》の魅力がさっぱり伝わってこない。これは作者が削ぎ落とした結果なのか,それともこの作者には人が書けないのか? 後続作品との関連を聞いてみたが,要領を得ない。代わりに「『水の迷宮』は読んでみるべきです。もっとトンデモですから!」とか言われる始末。う〜ん,2冊目に手をのばす気がまったく起きないのだけれど。
 本作について,奇抜な題材をミステリーの枠内で手がけようと試みている本編の意気込みは感じるのだけれど,「終章」が台無しにしていると思う。