神坂一 『ドアーズ』

 神坂一(かんざか・はじめ)の『スレイヤーズ!』は初登場の時からずっと(ちんまいやつも含めて)読み続けてきていますが,他のシリーズは相性が悪いらしく読んでおりません。とはいえ,12年も前の認識を持ち続けているのもどうかと思いまして,最新刊を買ってきました。
 『ドアーズ(DOORS) I まぜこぜ修繕屋(リペアラー)』(ISBN:9784044146184)は,ある女子高生の部屋がドアだらけになって,妹がリスの姿に変化してしまっている。でも,この世界が異常だと認識しているのは主人公だけで,妹達にしてみれば今ある状態こそが世界の正常な姿と思っているらしい――というのが本作のポイント。解説にしゃしゃり出てきた男に言わせると,いろんな世界の常識が混ぜこぜになってしまったらしい。修復のためには,扉の向こう側に行って特定の人物をレンチのようなもので叩くと,ちょっとずつ法則が変わっていく。一気に直るのではなく,ちょっとずつ。だから,αという世界を修復すると妹はリスから触手に変わるし,βという世界に手を加えると妹文明が反逆を起こす。おかしな世界をコミカルに描いていくというところでは,山本弘『ギャラクシートリッパー美波』(ISBN:4044601062)にも通ずるところがあります。
 会話にしろ,地の文にしろ,随所に織り交ぜられた自己ツッコミが楽しい。会話をテンポ良く繰り出すことでおかしみを醸し出す神坂の本領が遺憾なく発揮されている。
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