野村美月 『“文学少女”と死にたがりの道化』

 出張の帰路,羽田空港のラウンジで野村美月(のむら・みづき)『“文学少女”と死にたがりの道化(ピエロ)』(ISBN:4757728069)を読んでおりました。
 物語を激しく愛し,本をむしゃむしゃと食べてしまう“文学少女”遠子先輩。そんな彼女に〈本日のおやつ〉を書く元・天才美少女作家,心葉(このは)。
 本作では太宰治人間失格』を中心に据えてストーリーが展開され,十年前に起こったある事件へと接近していく。
 惜しい。
 ドジっ娘が転んでくまパン見せて,てへっ☆ これはお約束。ならば反復もお約束ではないか。ねこさんでもパンダさんでもよい。二度,三度と見せるべきであろう。
――というのはさておき。
 主要登場人物2人とゲストヒロインに登場段階で属性を貼り付けまくったために,かえって本筋の面白みが削がれてしまった感がありました。ストーリーで意欲的なことに取り組んでいるのですが,キャラで遊んでいたぶん紙幅が圧迫されて,肝心な場面の描写が手薄になってしまった感があります。