上月雨音 『SHI-NO 夢の最果て』

 上月雨音(こうづき・あまね)『SHI-NO ―シノ― 夢の最果て』(ISBN:9784829164099)を読みました。
 シリーズの第7巻。パーティが開かれている中,トイレで女性が射殺された。監視カメラの分析から容疑者として割り出されたのは5人。手がかりは,被害者がベルトの裏側に残された「犯人は夢路ハナ」というメッセージ。
 ――なのだが,この巻に限っていえば事件の顛末はどうでもいい。――というのは富士ミスを読んだ後に毎度言っているような気もするが,SHI-NOシリーズ内部の比較でもミステリとしての要素は弱い。見返しの作品紹介には事件のことなど一行も書かれていないところが潔い。
 少なくとも〈本格〉とは評価しがたく,〈社会派〉寄りのホワイダニット。結末はかなり強引というか卑怯というか。
 前巻『支倉志乃の敗北』から話の流れが変わり,それまでの不思議少女を受動的に描写するという態度から,キミとボクの有り様へと焦点が移ってきていますけれど,どういう方向に持っていくのか先が読めません。すでに志乃ちゃんが一歩を踏み出している時点で「なりたい自分に向かって,進んでいける」とか自問しているヘタレっぷりですからねぇ。
 何より,真白ちゃんによるヘタレ主人公もてあそびが弱かったのが残念でした。