杉山登志郎 『発達障害の子どもたち』

 日帰りで東京出張。差別法理を議論する研究会だったので,行きの機内で杉山登志郎(すぎやま・としろう)『発達障害の子どもたち』(講談社現代新書ISBN:4062800403)を読む。
 著者は1951年生まれの医師で,児童青年期精神医学が専門。
 実にすぐれた啓蒙書amazon.co.jpでは冒頭の5頁がお試しで読める。

読者のみなさんは,おのおのについての是非をどのように思われるだろうか。〈以下,引用者による抜粋〉

  • 発達障害児も普通の教育を受けるほうが幸福であり,また発達にも良い影響がある
  • 通常学級の中で周りの子どもたちから助けられながら生活をすることは,本人にも良い影響がある
  • 養護学校卒業というキャリアは,就労に際しては著しく不利に働く
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これらの問題設定に対し,著者は

「これらはすべて,私から見たときに誤った見解か,あるいは条件付きでのみ正しい見解であって一般的にはとても正しいとはいえない。」

と答えている。この先は,実際に本文に当たって欲しい。いみじくも《児童》,《教育》,《福祉》の分野に携わる者ならば読んでおくべき書。近年,新書という形態を採る出版物に期待されていた〈教養の提供〉という機能が低下したように思えるところだが,本書には救われた思いがする。
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